思考停止に繋がる野球の“良くない習慣” 就活でつまずく選手も…小学生指導の問題点

子どもの考える習慣が身に付く野球の指導方法とは(写真はイメージ)
子どもの考える習慣が身に付く野球の指導方法とは(写真はイメージ)

野球指導者・畠山和也氏が提言する「自分で考える」指導の大切さ

 学童野球の現場では、特に小学校低学年を指導する際に「すべてを指示する」ケースが散見される。技術は上達するかもしれないが、宮城教育大軟式野球部監督の畠山和也さんは「それでは子どもが思考停止してしまう」と警鐘を鳴らす。自身の息子が所属するスポーツ少年団でも小学校低学年の指導を担ってきた畠山さんに、その真意を聞いた。

 秋田経法大付高(現・ノースアジア大明桜高)の硬式野球部出身の畠山さんは、東北福祉大で軟式をプレーし、2013年から宮城教育大軟式野球部の監督に就任。東北地区大学軟式野球連盟理事長を務めるなど、軟式の競技普及に努めている。

「例えば、ランナーが一塁にいたら二塁に投げてフォースアウトを狙う。フライを捕った時にランナーが飛び出していたら一塁に返す。いずれも当たり前のことですが、それらをベンチからすべて指示する指導者が見受けられます。指示されることで野球のルールには精通したとしても、自分で考える習慣はつかない。子どものためにはならないと思うんです」

 大学生を指導する中で、選手のグラウンド外での言動を目にして「高校まで相当規制されて、ハマった型で野球をやってきたのだろうな」と感じることがあるという畠山さん。野球を離れ、いざ就職活動を始めると途方に暮れる学生も少なくない。人間形成は学童野球の段階から始まっていることを認識し、以降は「野球を通じて人として何を学べるか」を重視して選手と接するようになった。

「自分から新しい答えを見つけにいかない習慣があるのが、野球の良くないところ。グラウンドで尊敬する指導者に出会い、その人についていって一生懸命努力したとしても、結局それが凝り固まった思考につながってしまうケースもある」

 自身の現役時代を振り返っても身に覚えがある。畠山さんは「素直に話を聞く良い部員だった」と自負する一方、「気づいたら自分で考えられない人間になってしまっていた」と反省も口にする。「グラウンドの中で指示を待ってしまっていたのが悔しいんです」。だからこそ、教え子には野球を通じて人間性を磨いてほしいと心から願う。

宮城教育大軟式野球部監督の畠山和也氏【写真:本人提供】
宮城教育大軟式野球部監督の畠山和也氏【写真:本人提供】

小学生の段階からゲームノックで求める「臨機応変な対応」

 そんな畠山さんは、これまで小学生を指導した際には、「間違えても良いから自分で考えてほしい」と口酸っぱく伝えてきたという。決して放置するわけではない。最初にインプットをした上で、選手個人の考えを聞くのだ。

 実際の試合を想定して行うゲームノックでは、イニングごとに指名した選手に「どう守るか」の判断を委ねる。ランナーが三塁にいる時は前進守備を敷くのが定石だが、打者や状況によっては守備位置ごとに微妙な調整を行うなど、臨機応変な対応が必要。それらを指示を待たずに自分から考えられるようにすることで、「社会に出て活躍する人が持つ思考」を育むのが練習の意図だ。

「せっかく毎週、一生懸命野球をしているのだから、考える力をつけてほしい。自分で考えることをやめさせるのが一番の毒。みんながプロ野球選手になるわけではないし、いつ野球を辞めるか、もしくはできなくなるか分からない。野球をしていた期間に『人として何も成長しなかった』とは、なってほしくないんです」。野球を通じた人間形成。口にするのは簡単だが、子どもの将来を担う指導者はその本質を見極めなければならない。

(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)

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