少年野球に「盗塁」は必要か? 一方的試合、捕手の怪我撲滅へ「規制」の動き

投手に次いで多い捕手の健康被害、盗塁の際の送球が一因とされている

 アメリカ発祥のリトルリーグでは、走者は投手の投球がホームベースを通過するまで離塁できない。実質的に盗塁はできないようになっている。塁間は18.29メートルとさらに短い。

 リトルリーグは戦後、日本にももたらされ、広く普及した。当時の小学生たちは盗塁のない野球をしていた。しかしリトルリーグのルールに飽き足らない思いを抱いていた日本の野球関係者によって、盗塁などが認められた大人の野球に近いルールのボーイズリーグが生まれた。

 また、リトルリーグから派生したリトルシニアも盗塁を認めている。その後できたヤングリーグも盗塁ありである。さらにアメリカ発祥のポニーリーグも盗塁が認められていた。軟式野球でも盗塁が認められている。

 こういう形で日本の少年野球は「盗塁あり」が主流となった。それが「出塁―バント・盗塁―得点」という日本独特の野球のスタイルにつながった。

 しかし「盗塁あり」の少年野球は、ワンサイドゲームが増えるだけでなく、まだ十分に肩、肘が成長していない時期の捕手に大きな負担を与える。日本の少年野球では投手に次いで捕手の健康被害が多いが、これは腕だけで二塁に速い球を送球する動作が影響していると考えられる。

「盗塁がある野球は、体が出来上がってからでもいいのではないか。少なくとも小学生の時代は盗塁なしでもいいのではないか」。そういう考え方が広がりつつある。

 全日本軟式野球連盟の宗像豊巳専務理事は今年1月、「野球肘障害を減らすため、さらなるルールの改定(案)」を発表した。その中に『盗塁数規制 (1試合3~5回)、パスボールでの進塁なし』という項目があった。

 延々と盗塁、得点が続く一部の少年野球の風潮に歯止めをかけ、野球少年の健康を守ろうとする動きが日本でも生まれてきている。

 少年野球の「盗塁」に関しては、議論を深める時期が来ているといえよう。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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