少年野球の罵声は「指導者の能力不足」 野球人口拡大へ求められるコーチ術とは
選手が思い通りに動かないのは指導者の考えを理解していないから
残念なことに、少年野球の現場ではいまだに大人たちの罵声が飛んでいる。
「何べん同じことを言わせるんだよ!」
「頭悪いのかよ!」
「聞いてねえのか!」
「やる気ねえのか」
「レギュラー外すぞ!」
大人が聞いてもドキッとするようなきつい言葉を、子供に投げつける大人がいまだにいるのだ。言われた子供は帽子を取って立ちすくんでいる。周囲の子供たちも声を失っている。最近は女子野球でもこういう声を上げる男性の指導者がいる。
日本の少年野球では、練習や試合で大きな声を出すのは「大人」であり、その多くは叱声なのだ。もちろん、最近は、そうでないチームもあるが、こういう声が飛び交う現場も依然として多いのだ。
かつては子供に手を出す指導者も珍しくなかったが、最近はどの少年野球団体も「暴力厳禁」を通達している。動画に撮られたり、通報されることも多いので、暴力は減っているが罵声はいまだに見られる。
保護者の反応は、くっきりと二分される。子供が叱られるのを見て「監督の言うとおりだ」「しっかりしろ」という親がいる。そういう親は、指導者に「厳しく指導してほしい」ということが多い。もう一方の親は「家でもそんな叱り方をしていないのに」と引いてしまう。そういう家の子供は、野球をやめてしまうことも多い。
また、こんなシーンを見ている周囲の人の中には「野球はまだこんなことをやっているのか」と思う人も多い。こうした旧弊な指導が「野球離れ」につながっているという見方もある。
指導者の罵声は端的に言えば「指導者の能力不足」からきている。選手が指導の通りに動かないのは、指導者の言うことを理解していないからだ。説明が不十分か、説明の仕方が悪いのだ。罵声は、そういう指導者の「能力不足」を子供に「責任転嫁」しているということになる。