「契約がない中でも野球をやっている」田澤純一が球界復帰への思いを激白

12年前と変わらぬスタンス「僕はアメリカが上とか、日本が下とか考えているわけじゃない」

 開幕日が決まったNPBに続き、メジャーでも今季開幕に向けてMLB機構と選手会が交渉を重ねている。一方、台湾や韓国ではすでに開幕。各地で野球界が動き出している。そんな中、田澤が頭に描くのは、再びアメリカに戻る自分の姿なのだろうか。

「正直、それすらも分からないですよね。コロナで国が大変な思いをしている中、海外の選手にチャンスを与えますかね。普通に考えたら、自分の国の選手と契約するんじゃないかなって。ただ、誰にとっても初めての状況だから読めないですね。僕はアメリカが上とか、日本が下とか考えているわけじゃなくて、求められる場所があればどこでもいい。もし求められるのであれば、台湾だってあるかもしれません。エージェントと相談はしますが、別に台湾だから行きませんってことはないです」

 今でも「田澤=日本球界に対する裏切り者」と見る人がいる。その発端となったのが2008年。当時、新日本石油ENEOS(現JX-ENEOS)に所属していた22歳の若者はメジャー挑戦の意思表明をし、NPB球団にドラフト指名を見送ってくれるよう伝えたことにある。レッドソックスと契約すると、ドラフト候補選手とは交渉しないという日米間の“紳士協定”に触れたとして問題視され、NPBのドラフト指名を拒否して海外プロ球団と契約した選手は一定期間はNPB球団と契約できないとするルールが生まれ、いつしか「田澤ルール」と呼ばれるようになる。

 田澤のスタンスは12年前も今も変わらない。投げたい場所、求められる場所で投げるだけ。「どちらが上とか下とかじゃなくて、ただ僕が最初に選んだのはアメリカだっただけ」。この言葉に偽りはない。

「僕の思いが勘違いされて」できたルール。自分の気持ちに素直に従っただけだったが、当時から「このルールが生まれたことで、僕のせいで、後に続く子たちが海外に行くチャンスを奪ったのなら、すごく申し訳ないなと思います」と責任を感じ、今もなお背負い続けている。

 ちなみに、昨年ソフトバンクに入団したカーター・スチュワートは前年の2018年MLBドラフトでブレーブスから1巡目指名を受けたが、合意に至らず。短大に入り直し、2019年ドラフトの目玉になると見られていたが、驚きのソフトバンク入りを果たした。状況としては田澤の逆パターンとなるが、アメリカには「スチュワート・ルール」は生まれていない。田澤の時と比べ、日米球界を取り巻く環境は変化したが、それでも「田澤ルール」を見直すいい機会のように思う。

コロナ禍で気付いた「僕にとってはプラス」の一面とは…

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