「勝敗がすべてではない」広澤克実理事長に聞くポニーリーグが目指す在り方
投球数リミット、国際標準バットなどを導入した「SUPER PONY ACTION」を制定
10月26日、2020年のプロ野球ドラフト会議が行われる。この日、ドラフト指名を受け、子どもの頃に夢見たプロ野球選手として一歩を踏み出す選手もいれば、指名されずに来年以降のプロ入りを目指す選手もいる。一方、プロ野球選手を目指しながらも、故障が原因で野球を諦めなければならなかった子どもたちも多くいる。一人でも多くの子どもたちが夢を追い続けられるよう、今、アンダー世代の指導現場では球数制限導入など、子どもたちを防げる故障から守ろうという動きが活発になってきた。
その中でも、積極的な改革に取り組んでいるのが、日本ポニーベースボール協会(ポニーリーグ)だ。昨年発表された独自の取り組み「SUPER PONY ACTION 2020」では、投球数にリミットを設定、変化球禁止、低反発で木製バットの打感に近い国際標準バット(USAバット)、怒声罵声に対するイエローカードの掲出などを導入。「Protect Our Nation’s Youth(国の宝である青少年の成長を守る)」という理念の下、子どもたちの安全を確保し、野球を通じた成長を促すことを大前提に活動を行っている。
球界に一石を投じる動きに至った背景について、現役時代はヤクルト、巨人、阪神で活躍し、通算306本塁打を放った広澤克実・日本ポニーベースボール協会理事長に話を聞いた。根性論が全盛期に育った広澤理事長は「時代は変わりました」と、過去から脱却し、現代の価値観に合った育成の在り方について語ってくれた。
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――ポニーリーグで画期的な試み「SUPER PONY ACTION」を実施することになった背景は。
「ポニーリーグのコンセプトにある『青少年の成長を見守る』という理念に立って、子どもたちのことを考えた時に、いかに子どもたちを防げる怪我、危険から守ってあげられるか(が大事)。一番多いのが肘、肩の故障ですね。これはやはり改善できるのではないか。そういう観点から投球数リミットを設けました。
同時に、他(リーグの)チームの話ですが、百数十人も選手がいて、ベンチのまま試合に出れない子どももいる。野球は試合をして覚えること、試合をできる環境を作って出場する機会を均等に与えることが大事。その中から高校へ行って甲子園を目指す人も、もちろんどうぞと歓迎するし、プロ野球を目指す人もいるでしょう。
我々ポニーリーグは通過点の期間なので、子どもたちをいかに守りながら、次のステップで健康に野球をできる環境を作って送り出せるか。これが僕らの役割じゃないかな、と。その観点からのルール作りだと思っています。『SUPER PONY ACTION』は徐々に取り入れて、すでにいろいろな場所で実施されています。一気に(導入)というのは難しいので、いろいろな準備はありましたね」