夢の実現だけでは終わらない NPBジュニアトーナメントが17年も続く理由
2019年から「DH制」を採用、今大会からは「リエントリー制」を導入
「今まで投手をしていた時にイラッとすると顔に出てしまいましたが、平常心を保つことや味方に声をかける大切さをコーチから学びました。チームメートの投手と比べると、自分は緩急の使い方やコントロールがまだまだですし、内野の守備ではスローイングに差を感じました」
短い期間で上のレベルを知り、技術も心も成長。こうした経験が普段プレーするチームに還元され、少年野球全体への効果も期待できる。
17年目を迎えた「ジュニアトーナメント」は少しずつ形を変えている。2019年から「DH制」を採用し、今大会は一度交代した選手が再び出場できる「リエントリー制」を導入。どちらも選手の出場機会を増やす狙いがある。また、体への負担を考慮して、2020年から全選手の肩や肘を検診。球数は1人の選手につき1日70球に制限した。少年野球の在り方が議論され変化していく中、元プロ野球選手がトップレベルの小学生を指導する大会で、子どもたちにとってより良い環境や仕組みを模索する意義は大きい。
阪神タイガースジュニアの白仁田寛和監督は「どんなに能力が高くても、怪我をしたら野球を続けられません。練習や試合で量より質を上げていく方向に変わっていく方が、子どもたちのためになると思います」と変化を歓迎する。福岡ソフトバンクホークスジュニアの帆足和幸監督は「球数が限られて投手の四球が少なくなりました。コントロールの良い投手が増えていくのではないかと感じています」と話した。
変化を取り入れる姿勢は、大会を主催するNPBが「少年野球の見本になる」という意識の表れといえる。他にも、今大会から取り入れた動きには「フェアプレー会議」がある。全12チームの監督を集めて、プレー以外でも見本となれるようディスカッションした。大会の個人賞には成績だけではなく、相手チームや審判への敬意といった野球に取り組む姿勢も加味した。
「NPB12球団ジュニアトーナメント」は、全国トップレベルの小学生が集まる大会として知名度を高めてきた。NPBが次に描くビジョンは「少年野球の見本」。野球の技術だけではなく、人間的に尊敬される選手の育成を目指している。
(間淳 / Jun Aida)
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