早生まれの方が将来大成する? 誕生月で見るプロの傾向と少年野球で考えるべきこと
顕著な早生まれの子どもの野球離れ、仕組み作りが急務
この結果、何が起きるか。1~3月生まれの子どもたちは野球から離れていく。野球選手数の割合は4~6月生まれが小学校、中学校、高校と高くなっていくのに対し、1~3月生まれは小学校で22.5%、中学校で19.6%、高校で17.8%と下がっている。勝亦氏は次のように説明する。
「年齢が低いほど発育に差があります。同学年の中で生まれ月が早い子どもは体が大きいため、試合に出場する機会が多くなります。一方、1~3月生まれの子どもは試合に出られず、達成感や楽しみを得られないので野球をやめていきます。同学年の中で優劣を決めると、どうしても早く生まれた子どもが、いい経験をする傾向が高くなります。これは、才能の違いではなく、成長の度合いが原因です」
生まれ月によって成長に差が生まれることを指導者や保護者が知っておかないと、野球を楽しむ、才能が開花する前に野球をやめる子どもたちが増える不幸な結果を招く。少年野球の技術の差は、持っている力の差ではなく、単に成長のスピードの差である可能性が高いためだ。
そこで、勝亦氏は「試合をする限り、勝利を求めるのは当然です。チーム単位では限界があるので、勝利のみを求めてしまう現在の仕組みを変える必要があります。例えば、連盟に登録されている選手を、生まれ月や体格によってチーム分けして試合することで、出場機会の偏りをなくすことができます。地域や連盟で協力してリーグ戦を取り入れれば、チームの勝利だけでなく、個人の成績を評価することもできます」と訴えている。
トーナメント方式では、どうしても勝利至上主義になり、その時点で力のある選手に出場機会が偏ってしまう。勝亦氏と同じ考え方を持つチームは増えつつあり、選手の成長の度合いに合わせたチーム編成をしているところもあるという。「生まれ月の影響を指導者や子どもが把握するだけでも現状は変わってきます。子どもが希望に合うチームに入るのが理想です。新しい考えを持ったチームが増えて、子どもの選択肢が広がるのは好ましいことです」。
生まれた月によって才能に違いはなく、未来の可能性も変わらない。同学年の中で生まれ月の遅い子どもたちが不利になったり、誤って能力を見切ったりしないように、成長や可能性を妨げない仕組みづくりが大人たちの責任となる。
(間淳 / Jun Aida)
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