少年野球の部員集めは“口コミ”が一番 総勢80人超、子どもたちが集まる理由とは

多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:川村虎大】
多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:川村虎大】

初心者への指導はゴロ捕球とキャッチボールから、大事なのは“成功体験”

 では、どのようにして初心者の子どもに野球の楽しさを実感してもらうのだろうか。指導者講習会で、初心者の練習方法についての質問が飛んだ。辻監督が初めて野球をする子どもに教えるのはゴロ捕球とキャッチボール。意外にも、打撃練習はその後だという。

「打撃は難しいんです」。辻監督は成功体験が楽しさにつながると考えている。初心者は打ち損じや空振りする可能性がある打撃より、ゴロ捕球やキャッチボールで成功体験を積み重ねることで野球を好きになるという。キャッチボールにも、子どもを思った指導がある。

「ボールは右か左に『逃げて捕れ』って伝えます」。重力で落ちながら向かってくるボールを、野球未経験の小学生が真正面から捕球することは難しい。左右に逃げて捕ることで落下している軌道を見て捕ることができる。慣れてきて捕れるようになると、次に自ら捕りに行くよう指導する。

 少年野球では、よく「ボールから逃げるな」「怖がるな」という指導があるが、大きな間違いだと辻監督は話す。「誰だって怖いに決まっているんですから」。逃げずに捕ろうとして、さらに怖く感じてしまうことが問題だという。一度、感じてしまった恐怖は簡単には克服できないからだ。

 野球人口の減少が問題視されている昨今、試合を組めなくなったチーム同士が合併することも多い。辻氏は「厳しい言い方をすると、根本的な解決になっていない」と指摘する。“楽しく、強く”で80人超える大所帯になった多賀少年野球クラブは、選手の笑顔を引き出せるから、人が集まる。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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