教員の“働き方改革”で広がる困惑 野球特有の問題も…「部活」は「地域」に移行できるか?
野球特有の課題、数ある組織や連盟のトップが不在
野球はチームやグループで集まらないとできない連係やサインプレーが多い。また、部活以外に軟式ボールやバットを使って練習できる場所はほとんどなく、個人練習はランニングや素振りなどに限られる。土日に活動できなくなれば、野球をやりたい子どもたちは部活ではなくクラブチームを選ぶのは自然の流れといえる。ただ、金銭面や保護者の負担など、条件が合わずにクラブチームへ入れない子どももいる。野球をする場所がなければ、子どもたちは別の競技に移らざるを得なくなる。
もう1つ、野球特有のハードルがあるという。磯崎さんは野球の組織について、こう話す。
「サッカーを代表するように、野球以外の競技には協会があります。協会をトップにピラミッド型になっていますが、野球は連盟や組織がそれぞれに活動しており、線でつながっていないのが現状です」
野球は、かつて日本の“国民的スポーツ”だった。スポーツを始める際、当たり前のように野球を選ぶ子どもが多く、競技人口は右肩上がりだった。その動きに合わせて、次々に連盟や組織ができた。数が増えると、弊害も生まれる。たとえ個々の連盟や組織に課題を解決する力があっても、協会といったトップ不在の仕組みは枠組みを超えた問題が生じた時にスピード感を欠くのだ。
軟式野球をする中学生は現在、15万人を切っている。わずか15年ほどで、半分まで減少した。中学校の野球部が縮小すれば競技人口はさらに減り、高校や大学など上のカテゴリーでプレーする人数も少なくなる。中学校の部活が直面する問題は、高校野球やプロ野球の未来とも無関係ではないのだ。磯崎さんは「公立中学の野球部がなくなってしまうと、10年後には軟式野球をする子どもはほとんどいなくなると思います。そうなれば高校球児は今の3分の1くらいまで減るでしょう。野球の存続、日本のスポーツの存続危機と言っても過言ではありません」と訴える。
一度減ってしまった競技人口を回復するのは簡単ではない。「部活の大転換」まで1年。国や野球に関わる各組織や連盟が危機感を共有し、同じ方向に進まなければ手遅れになる。あすからは部活動改革による課題について、全3回の連載で解決方法を探る。
(間淳 / Jun Aida)
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