子どもの将来考え“世界初”の取り組みも 野球未経験の医師がチームを設立したワケ

“世界初”の「移動式MRI検診車」導入、現場での検査を可能に

 子どもたちが長く楽しく野球を続けられるよう、まずは怪我の防止を考えた。筑波大の硬式野球部監督で、動作解析の第一人者でもある川村卓氏に協力を仰ぎ、コーチングを学んでいる大学院生にコーチを要請した。チーム内で球数(4年生は50球、5年生は60球、6年生は70球)や練習時間(大会を除き週1回4時間)に独自ルールを定め、投げすぎを防ぐ仕組みをつくった。

 さらに、岡本代表は医師としての知識や経験を生かし、肩や肘の検診も強化した。検診の必要性は少年野球界にも広がっており、定期的に実施しているチームや選手は増えている。検診は超音波によるエコー診察が一般的だが、手軽な反面、免許が必要ない。岡本代表は「経験の少ない人がやると、怪我が見えないこともある」と指摘する。

 MRI検診はより正確な検査ができるが、デメリットもある。体全体を入れるMRI装置は運搬できず、病院に行かないと検査できない。さらには価格は1台数億円と高額なため、気軽に導入できない。そこで、岡本代表が考えたのが移動式の「MRI検査車」だった。「より多くの子どもを正確に手軽に検診したい思いでした」。腕だけを検査機に入れられるよう小型化し、ミニバンの後ろに搭載。その場で検査結果をモニターに映せるようにした。クラウドファンディングで資金を募ると、希望額の2倍以上の金額が集まった。

 移動式の肘検診車は世界初の取り組みだという。6月には春日学園少年野球クラブの練習場で移動検診が実施された。今後は他のチームにも広げていく予定だ。一見、常識破りに見えるチーム方針は、子どもたちの将来を考えてたどり着いた答え。少年野球の競技人口減少が深刻な中で、メンバーが増加しているのは、その答えが“正解”と考える子どもや保護者が多い証だろう。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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