牧秀悟の“鬼の形相”に「身震いした」 森下翔太が放送室で一喝されたワケ
高校時代の恩師、門馬敬治監督の“絶妙な”タイミングでの声かけに感謝
自分の“世界”に入り込んでしまうと、周りからの言葉に耳を塞ぎたくなった。人に何か言われること自体が嫌だった。それでも門馬監督は声をかけてきてくれた。
「今、振り返ると、大事なタイミングと言いますか、自分が『このまま行ったらダメだろう』という時に声をかけてくださった。自分の中ではとてもありがたかったですし(精神的に落ち込んでいる時に)すぐに回復できるような言葉をいただきました」
指導者にとっても難しかったはずの声掛け、長いスパンで成長を見守る方針で、森下は育てられた。そして、選手の能力を引き出すことに定評のある中大・清水達也監督に育てられ、スラッガーとして大成し始めた。
「(清水監督にも)1年生から使っていただいたことが本当に大きかったです。起用してもらえなければ大学ジャパンの経験もできませんでしたし、(東都リーグの)ベストナインも取れていないです。駄目でも使ってくれたことがありがたかったです」
1年生から起用される経験は高校の時と同じだった。だからこそ、自分で壁を乗り越えなくてはならなかった。試合に出られない上級生がいること、主軸を任されたのならば、自分が打たないと勝てないという責任を背負い、グラウンドに立ち続けた。
大学生になってからも、森下のことを“本気”で叱ってくれた男がもう一人いた。中大の2学年先輩に当たる牧秀悟内野手だった。2年生の春のリーグ戦前のことだった。森下は試合中のベンチで、卑屈な言動があったことへの注意を受けた。
硬式野球部のグラウンドの一室にある「放送室」という部屋に呼ばれた。10分間、緊迫した状況が続いた。いつもは柔和な先輩がいつもと違うことは容易に想像ができた。