高校サッカーの名将が野球界に抱く違和感 プロチームとの交流で「学ぶことは多い」

“越境入学”に理解「選手は成長に何が必要か、どんな環境が良いか考えている」

 スタジアムで試合を見たり、チームの評判を聞いたりする以上に、練習参加は進路を決める判断材料になる。入学してから「イメージと違った」と後悔するのは、中学生も高校側も幸せとは言えない。事前にチームの雰囲気や方針を知っておけば、より希望に合った進路を選択できる。

 高校野球では、越境して選手が集まった強豪校が批判されることがある。実際、圧倒的な強さで今春の選抜高校野球大会を制した大阪桐蔭に対しても賛否両論が巻き起こった。部員150人の前橋育英高サッカー部にも県外出身者は多い。山田監督は、こうした論調を一蹴する。

「どの高校に進むかは本人が決めること。本人が大阪桐蔭は嫌だと思ったら行かないはずです。選手は、より成長するために何が必要か、どんな環境が良いかを考えています。日本の野球のレベルアップを考えたら、高校側が選手を獲られたと言うのは馬鹿げた話です。うちも選手を勧誘していますが、他の高校とけんかになったことは一切ありません」

 中学と高校の交流は、私立の強豪にだけメリットがあるわけではない。前橋育英高の練習会に参加した結果、公立高校への進学を選ぶ生徒もいるという。これは、高校野球の連合チームの問題を解決するヒントになり得る。近年、地方を中心に公立高校は部員不足から連合チームで大会に出場する学校が増えている。日常的に中学と高校の交流があれば、公立高校ならではの魅力を中学生に伝え、部員獲得につながる可能性がある。

 山田監督は中学生との練習試合や練習会を「セレクションではなく、雰囲気を見てもらう場です。判断するのは本人。進路を決めるきっかけになればと思います」と話す。交流した高校を選んでも、別の高校を選択しても、双方に貴重な時間となる。

(間淳 / Jun Aida)

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