虫取りしていたT-岡田を“スカウト” 少子化に負けない82歳「おばちゃん」の勧誘術

オリックス・T-岡田【写真:荒川祐史】
オリックス・T-岡田【写真:荒川祐史】

T-岡田は「チームで一番手のかからない子だった」

「体が大きかったのでね。近所の三角公園で虫取りしているところを『野球やらんか』と声をかけて誘いました」

 T-岡田は、小学校6年ですでに身長173センチと一際目立つ体格だった。棚原さんは「小学校だけで(本塁打が)33本。インコースがファウルにならないのが印象的でしたよ」と当時から長距離砲の才能を感じていた。そして手がかからず、とても穏やかな子どもだったと振り返る。

「友達にも敵がいなくて、いちばん手のかからなかった子でした。怒っているところを見たことがない。性格的にはすごい真っすぐで、丸い人」。T-岡田がチームに所属していた当時、ある事件が起きた。同級生約20人が練習をサボり、ゲームセンターで遊んでいたという。しかし、T-岡田だけはゲームセンターに行かなかった。

 34歳で迎えた今季は怪我に苦しみ、打率が2割に届かず、本塁打もわずか1本。それでも、棚原さんは教え子が再び本塁打を量産する姿を思い描いている。「オリックスでも皆さんから愛されている。まだまだ頑張ってほしい」。虫取りの最中に野球の道へ勧誘した少年を、何年経っても我が子のように見守っている。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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