野球で多い腰痛を予防したい 専門家が勧める効果的なストレッチとトレーニング

腰椎は構造的に回るようにはできていない? 腰痛の原因とは…

 肘内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の権威である慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師は、野球上達への“近道”は「怪我をしないこと」だと語ります。練習での投球数を入力することで肩や肘の故障リスクが自動的に算出されるアプリ「スポメド」を監修するなど、育成年代の障害予防に力を注ぎ続けてきました。

 では、成長期の選手たちが故障せず、さらに球速や飛距離を上げていくために重要なのは、どのようなことなのでしょうか。この連載では、慶友整形外科病院リハビリテーション科の理学療法士たちが実際の研究に基づいたデータも交えながら、怪我をしない体作りのコツを紹介していきます。今回の担当は貝沼雄太さん。テーマは「腰痛の予防」です。

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 腰痛を感じている選手は多いと思います。その頻度が高くなるのは、野球が体幹の回旋動作を伴うためと考えられています。では、体幹の回旋とはどのような動作なのでしょうか。

 実は腰椎は構造的に回るようにはできていません。たとえば、肩幅に足を開いて立ったまま後ろを振り返る場合に体幹は約90度の回旋をしますが、腰椎では5~7度しか回旋しておらず、そのほとんどは胸椎と股関節で回旋しています。

 先ほど説明したように腰椎はほとんど回旋しません。その一方で胸椎と股関節が多く回旋します。そのため、胸椎と股関節が硬くて回旋ができないと腰椎に負担をかけてしまい、腰痛になってしまいます。また、腰椎は曲げた状態で回旋すると椎間板に負担がかかり、伸ばした状態で回旋すると椎間関節(背骨と背骨を繋ぐ関節部分)に負担がかかります。

 野球は、投球でも打撃でも体を伸ばした状態での回旋から始まり、徐々に体を曲げた状態になりながら回旋を続けます。さらには打撃ではフォロースルーでもう一度体を伸ばしながら回旋を伴います。野球の動作が腰にとって過酷なスポーツであることが理解できると思います。

 体幹のトレーニングは段階的に行うことが推奨されています(※1)。まずは胸椎と股関節の可動域をしっかりと確保することです。胸椎と股関節のストレッチは多くの方法がありますが、しっかりと伸ばせる方法をいくつか紹介します。

 次に体幹の安定性が大切となります。体幹の安定性を獲得するトレーニングはこの連載の「片足立ちや片足スクワットできますか? 体の“芯”を強化する『コアトレーニング』」で紹介したコアトレーニングが大前提となりますが、今回は回旋動作に対する安定化トレーニングを紹介します。

 最後に回旋動作でのパワー発揮です。これはメディシンボールなどを使用して行います。この段階的トレーニングは腰痛を予防しながら、最終的には回旋動作のパワーを獲得することができます。投球や打撃のパフォーマンスアップも期待できます。

▼参考文献
※1 A. Gillies et al. Preventing Lumbar Injuries in Rotational Striking Athletes. Strength and Conditioning Journal, 2013, 35(2), 55-62.

腰痛予防のストレッチとトレーニングを紹介

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