打席やマウンドで「緊張するのは大切」 専門家が少年野球の子どもに伝える“克服法”

緊張で失敗する選手と力に変える選手の違いは「今への意識」

――筒井さんは野球の他にも様々な競技で選手のサポートをされています。中には五輪に出場する選手やプロ選手もいますが、トップアスリートも緊張しているのでしょうか?

 プロにも緊張する選手はたくさんいます。表現の仕方は選手によって違いますが、選手たちは時間やお金など、競技のために色々なものを費やしています。自分のため、支えてくれた人のために「まずは結果」と考え、試合でプレッシャーや緊張を感じるのは自然なことです。少年野球をしている皆さんも、あきらめている時に緊張しないと思います。結果を出すために、ちゃんと緊張する、ちゃんと不安になるのは大切なんです。

――緊張でパフォーマンスを発揮できない選手と、緊張を力に変えられる選手の違いは、どんなところにありますか?

 不安につながりやすいのは、結果だけ、未来だけを見ている時が多いです。試合中に「負けたらどうしよう」「ミスが起きるかもしれない」と未来の方にだけ気持ちがいってしまうと、良くない緊張が続いてしまいます。「勝ちたいから緊張している」と緊張している自分を認めると、頭が整理されて「勝つためにはどうすればいいのか」と今に集中できます。プロセスに意識を向けるとやるべきことが見えてきて、いい緊張感になっていきます。もちろん、プロ選手も未来のことは考えていますが、今やるべきことと行き来できる選手は高いパフォーマンスを発揮できると感じています。

○プロフィール
筒井香(つつい・かおり)日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士。大阪市出身。高校時代にサッカー部でメンタルリーダーを務めた経験から、心理面でアスリートを支えることに関心を持つ。大学・大学院で人間行動学やスポーツ心理学を専攻し、研究を重ねて2015年に博士号(学術)を取得。その後、スポーツ現場や企業などでメンタルトレーニング業務に従事。2020年にアスリートのメンタルサポートやキャリア教育などを事業とする株式会社BorderLeSSを設立。子どもたちからトップアスリートまで幅広くメンタル面のサポートをしながら、複数の大学で非常勤講師を務めるなど研究・教育活動にも従事している。

Twitter:https://twitter.com/PhD_Kaori

(間淳 / Jun Aida)

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