話を聞かない選手を決して怒らぬワケ 異色の指導者が米国で学んだ“本当の自由”

米国では練習中に指導者から怒られない 求められるのは結果だけ

 米国の全体練習でウオーミングアップに割く時間が短いことにも合点がいった。体を十分に温めてからキャッチボールや打撃練習に入る日本とは対照的に、米国の選手は練習開始の数分前に集まって軽くジョギングや体操を済ませると、すぐにギアを入れて体を動かしていた。長坂さんは言う。

「朝5時半からトレーニングしていれば、全体練習前に準備はできていますよね。米国の練習中に指導者から怒られることはありません。結果を出せなければ自分で責任を取るだけです。これが自由なんだなと思いました」

 自由への考え方は独立リーグやメジャーリーグだけに限らない。子どもの頃から指導は共通している。選手たちは自分が取り組むべき課題や時間の使い方を考える。長坂さんは「これが小さい時から当たり前の環境で育った米国人に勝てるはずないと痛感しました」と語る。

 野球はチームスポーツではあるが、打席やマウンドに立てば、1対1の勝負になる。1つのボールを複数の選手で争うサッカーやバスケットボールとは競技の特性が異なると、長坂さんは指摘する。だからこそ、個人練習が大切と訴える。「子どもを指導する立場になった今、自由の意味を伝えたいと思っています」。自由の国で経験した苦い思いを教え子たちにはさせたくない。

(間淳 / Jun Aida)

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