千賀を飛躍させた“教えない”指導 元鷹コーチが貫く「長所を消さない」投手育成

ソフトバンクコーチ時代の倉野信次さん(右)【写真:藤浦一都】
ソフトバンクコーチ時代の倉野信次さん(右)【写真:藤浦一都】

ソフトバンクのコーチ倉野信次氏 「一定期間は選手を見てるだけ」

“教えない”指導が、選手の才能を開花させる。ソフトバンクで投手コーチを13年間務め、メッツへの移籍が決まった千賀滉大投手らを指導した倉野信次さんは、選手が壁にぶつかるまで技術指導を控えることを心掛けていた。アドバイスするタイミングを誤ると、選手の長所を消してしまう可能性がある。

 倉野さんは2021年シーズンまで13年間、ソフトバンクで投手コーチをしていた。千賀をはじめ、チームの中心を担う投手たちが入団したばかりの頃から成長を見守ってきたが、コーチをする上で、いつも心掛けていたことがあったという。

「まずは、選手を見るところから始めます。一定の期間は見ているだけで、技術的な指導はしません」

 倉野さんは新入団選手の短所が目に付いても、しばらくは指摘しない。例年1月から始まる新人合同自主トレや2月のキャンプインの時期は新人選手がベストなコンディションを維持していないケースが多いため「アマチュア時代の一番いい状態に戻して、そのパフォーマンスを見せてほしい」と伝える。

 3月のオープン戦が始まっても、選手に技術的な指摘をしない。指導するのはプロとしての心得や取り組む姿勢について。シーズンが開幕して試合を重ね、選手がプロの壁にぶつかった時に初めて、これまで観察して気付いたポイントを伝える。

選手が壁にぶつかるまで待つ すぐに短所を指摘するのは逆効果

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