中学硬式で日本一…練習で重視するのは質より量 2倍努力すれば圧勝できる“時間の法則”
東海中央ボーイズ竹脇賢二監督「アマチュアは、まず練習量」
量の先に質の大切さが見えてくる。今春に全国制覇を成し遂げた愛知県の中学硬式野球チーム「東海中央ボーイズ」を率いる竹脇賢二監督は、効率的に量をこなす練習にこだわっている。自身も中学生の時、素質やセンスがないと自覚し、誰にも負けない練習量を重ねて高校では4度も甲子園でプレーした。
東海中央ボーイズは今年3月、「第53回日本少年野球春季全国大会」で頂点に立った。全国の舞台でも披露した安定した守備力と強力な打撃は練習量で培われた。竹脇監督は量を重視する理由を、こう説明する。
「以前は『量より質を求めては?』という声がチーム内にありました。ただ、アマチュアは、まず練習量。基本を忠実にやればやるだけ伸びる時期です。量をこなした選手が質の大切さに気付き、質も付いてくると考えています」
東海中央ボーイズの活動は土日祝日に限られる。竹脇監督は平日分の練習量を週末にカバーする意図を持っている。チームとして結果を残している近年は、量を重視した練習に異論は出なくなったという。
考え方のベースには「時間の法則」がある。ランチェスター時間の法則を応用した必勝の法則を参考にしたものだ。「人生=才能×時間の二乗+過去の蓄積」と捉え、人の1.5倍の時間を費やせば、ある程度勝てる。さらに、2倍の時間で圧勝、3倍で最強となる考え方。「×時間の二乗」を練習量に置き換え、効率的な練習方法で量をこなして能力を伸ばしていく。
中学3年で誰よりも練習…鹿児島実業で甲子園に4度出場
竹脇監督自身、中学3年生の時に誰よりも練習した自負があった。元プロ野球選手の指導を受ける機会があり、教わったスイングを身に付けるために1年間、チーム練習のなかった月曜から金曜まで毎日1000回(50本の連続スイングを20セット)素振りしたという。平日の日課は学校から5キロ離れたジムまでランニングし、ジムで約1時間のトレーニング。その後、3キロ先にある公園までランニングして元プロ野球選手と合流した。公園には灯りがなく、互いの顔が見えないほど真っ暗。元プロ野球選手は竹脇監督が振るバットの音を聞いていたという。
「1000回振り終わった後に『100回手を抜いてスイングしたな。その分をやり直そう』と指摘されて、追加で100回振る時もありました。一発で終わらせるために集中して1000回振るようにしました。毎日続けた結果、2、3か月後に自分でも明らかにスイングが劇的に変わったと感じました」
中学3年で急激に打力が伸びた竹脇監督は鹿児島実業に入学し、1年夏から試合に出場して甲子園で4季連続プレーした。3年間でベスト4に1回、ベスト8にも3回入った。高校卒業後は新日鉄名古屋で活躍した。
「素質もセンスもなかった私が甲子園に出場して社会人でもプレーできたのは、練習量が他の人より多かったからです。東海中央ボーイズの選手たちは私よりも素質やセンスがあります。練習量をこなせば必ず素晴らしい選手に育つと確信しています」
チームは雨の日も練習を休みにしたり、練習時間を短くしたりしない。体育館で朝から夕方まで基本練習、フィジカルトレーニングに励む。「雨を理由に練習は休みません。社会に出てからも同じですが、継続は力になりますから」と竹脇監督。練習は「量より質」という声が近年の野球界で高まる中、量の重要性を選手に伝えている。
(間淳 / Jun Aida)
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