日本一3度の名将「根性野球やり出した」 吹雪で坂ダッシュ…小学生が示す驚きの“反応”
多賀少年野球クラブの辻正人監督熱弁「根性というものが大事になってきた」
少年野球界の近未来は「強制しない根性野球」が流行する? 所属する選手が130人を超え、全国大会優勝3度を誇る屈指の強豪チーム、滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督が15日、埼玉、東京を拠点にスクールを展開する「フルスイングベースボールスクール」に向け、オンライン講習会を行った。クラブチームも保有し、次世代の指導の在り方を模索する同スクールに対し、辻監督は「楽しい野球の次の形」として、「“根性”というものがものすごく大事になってきた」と熱弁した。
「ウチは今、選手を本気にさせるために“根性野球”をやり出しています。体力も含めていろんな限界がきた時に、そこで終わってしまうと、その限界を伸ばせないじゃないですか。自分が限界だって思うところから、それに耐えられる、逃げない忍耐力というのがものすごく大事になっています」
多賀少年野球クラブには「根性坂」と名付けた、約20メートルの“心臓破りの坂”をダッシュするメニューがある。ここを走る前に、辻監督は選手たちにこう語りかけるという。
「もう限界だ! となると、ここで手を抜こう…と頭をよぎり、誰もが楽な方に流されようとする。ええか、その限界まできた時に“きた~!”と叫びなさい。その後から自分がどれだけ全力で走り続けられるかを実験するぞ。そして走り終えた時には“楽勝~!”という言葉を口にしてみなさい」
限界がきたと感じた時に、そこからあと何歩、全力で足を回せたかということが“限界を突破する”ということ。そうした言葉を発しながら走らせると、スピードを緩ませることがないという。「自分が口ずさんだ言葉の方向に、体は動くもの。しんどいって言ったらしんどいようになっていくし、無理と言ったらやめてしまいたくなる。でもしんどい時に“楽勝”っていうと、笑顔になれて体が自然と動いてくれます」。
「2か月後、同じ言葉で通用するかといったら、もう通用しません」
年始には吹雪の中、小学3、4年生に“根性坂”を20本ほど走らせた。辻監督は、選手たちの反応に驚いたという。
「足とかパンパンやと思うのに、“この練習楽しかったな”って言っていたんですよね。本当はしんどいと思うんですよ。やはり、言葉をどう使うかです。言葉によって、子どもたちのモチベーションを高く保ち続けることができます」
練習試合の守備でミスをして下を向く4年生に、中畑清さん(元巨人、野球評論家)の代名詞でもあった「絶好調」というワードを言わせると、次の打席で安打を放った。言葉の持つ「魔力」を、辻監督は今しみじみと感じている。
「でも、これが2か月後、同じ言葉で通用するかといったら、もう通用しません。また精神的に鍛えないといけない時に、どんな言葉がけができるかを、また考えないといけない。今、自分から精神力を強くする訓練をしているということ、そこに自分から飛び込んでいくんだということ。これが、楽しい野球が浸透してきた次の課題。強制された精神力、根性野球じゃないところを、先駆けてやっています」
精神野球や根性野球と聞くと、ネガティブな意見ももちろんあるだろう。ただ、選手たちが楽しみながら自分を追い込んでいける環境づくりができればベストだ。指導者の言葉がけ1つで、子どもたちの精神力は自ずと養われていく。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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