選手に「伝わらない」苛立ちをなくすには? 元プロ監督が意識する日々の“リセット”
DeNAが指導者を“指導”する野球教室開催…ジュニアを日本一に導いた荒波翔さんら参加
これからは子どもたちだけではなく、指導者へ向けた「野球教室」も盛んになるかもしれない。横浜DeNAベイスターズは2月18日、神奈川・横須賀市の球団施設「DOCK」で、主に小学生を教える野球指導者向けの講習会を行った。
講習会には、昨年12月に行われた「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2023」で横浜DeNAベイスターズジュニアの監督を務め、チームを7年ぶり2度目の優勝に導いた荒波翔さんら8人の講師陣が出席。16人の参加者たちに、それぞれが考える指導法を伝授していった。
1、2軍選手はキャンプで不在のため、室内練習場をフルに活用。外野のフライ捕球や走塁など、プロの技を間近に見ながら動画を撮影したり、メモを取ったりする指導者もいるなど、有意義な3時間を過ごした。
球団にとって、指導者向けの講習会は今回が初の試み。ビジネス統括本部スクール事業部の渡辺誉志部長が開催の意義を話す。
「プロが子どもたちに教えることも、もちろん大切なのですが、指導者に指導法を伝えて、そのノウハウをチームに持ち帰ってくれたら、少年野球の活性化にもなります。そうして地元の野球が盛り上がってくれたらという思いで企画しました」
子どもたちが球団開催の野球教室に参加しても、チームに戻れば、監督やコーチの指導法が優先され、プロの教えが生かされないケースも多い。ならばと、指導者を“指導”することで、その教えはチームに浸透していく。指導者にとっても、時代の先端を行くプロの教えを聞けることは、またとない貴重な機会だ。
“子どもファースト”の指導者が増えれば「野球人口も増えていく」
荒波さんは、技術面と同じように、子どもたちへの「接し方」が大切だと強調する。繰り返し伝えてもなかなかできなかったり、忘れてしまったりする子がいても、それを頭ごなしに否定するのではなく、「毎日初めてのつもりで伝える」ように意識することで、指導者がイライラすることもなくなると語る。
「まずはその子の良さをしっかりと見てあげて、コミュニケーションを取ることが大事だと思っています。ミーティングでも上から話をするのではなく、座って同じ目線で話すとか、子どもたちが入ってきやすいような環境作りを意識していました。子どもファーストというか、そういう考え方の指導者が増えてくれたら、野球人口も増えていくのではないかと思っています」
球団は今後も施設の空き状況などを見て、指導者向け講習会の定期的開催を予定している。渡辺部長が将来的な“ビジョン”を語る。
「講習を受けた指導者が増えて、その指導を受けた選手がどんどんベイスターズに入ってきてほしいですね。指導技術に加え、トレーニングや栄養面まで、いろいろな人の知恵を借りながら、今後も広げていきたいと思います」
プロから発信されたこうした取り組みが増えていけば、少年野球の未来も明るくなる。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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