素人でも上手く撮れる少年野球「渾身の一枚」 打席だけに限らない“無心の瞬間”
プロのカメラマンはここが違う! 少年野球でかっこいい写真を撮るポイント
新年度が始まり、いよいよ少年野球も新たなシーズン。わが子が一生懸命にプレーする姿をバッチリ写真に撮りたい! と思っている保護者や、野球チームで撮影係を託された人たちに向けて、野球専門メディアFull-Countでメジャーリーグやプロ野球の撮影を担当するカメラマンに、コツを伝授してもらった。ズバリ「専門的な技術うんぬんについては触れない前提」で、難しいことは抜きに、誰でも簡単にベストショットが撮れるコツをまとめてみた。
まずは「ひたすら粘ること」と「ひたすら撮ること」が、ベストショットを逃さない第一条件だとカメラマンは言い切った。
「6~7イニング制の少年野球で、選手みんなを撮影するなら、おおよそ300枚くらいにはなるでしょう。わが子だけを撮影するにしても100枚くらいでしょうか」
言葉は悪いが「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」、そのためにも辛抱が必要ということだ。そもそも、素人とプロとの違いのひとつに「どれだけ粘れるか」があるらしい。カメラマンが取材の間、何度も口にしたのが「粘る」という言葉だ。
「粘って待っていれば必ず、素晴らしいタイミングはやって来ます」
素人の場合、実際には試合やプレー以外のところを見ていたり、他の人と話をしていたりして、カメラを構えている時間が短いのだという。
「いい瞬間だ! と思って、慌ててカメラを構えても、いい写真を撮るのは難しいものです。ずっと構えてはいられないでしょうが、できるだけ広い視野でグラウンドを見て、少しでも動きがありそうだと思ったら準備して、ファインダーをのぞいてシャッターを切る。粘り強く集中して撮影し続ければ、きっと何枚かは、いいぞ! というものがあると思いますよ」
その1枚を目指して、ママもパパも頑張ろう!
上手な写真を撮るために…少年野球撮影の3原則
細かい技術を抜きに、誰でも実践できるテクニックについて聞くと、「基本の3原則」を教えてくれた。
・子どもの目線の高さを意識する
・背景に気をつける
・選手を“追いかけて”撮影しない
できる限り選手に近い位置に撮影場所を確保し、選手の目線と同じくらいの高さでカメラを構えられれば理想的。そうすることで、顔の表情もしっかり撮影できる。「低い角度から撮った方が、選手の目が映ります。子どもを撮影するときに一番気をつけるのはそこです。ヘルメットや帽子の庇で目が隠れたり、陰になったりすることがないからです」とカメラマンは言う。
「少年野球だと必ずしも整ったグラウンドばかりではないし、撮影できる場所も限られているかもしれませんが、今ひとつだなと感じた時は場所を移動してみましょう」
一塁側と三塁側、ホーム側とビジター側で撮影するのでは、見えてくる選手の姿が違う。そこで改めて「粘る」のが肝心だと語る。
「場所を変えると、選手の後ろにあるもの、つまり背景も変わりますね。後ろがごちゃごちゃしているより、“奥行きがあって、はっきりした”風景のほうがきれいに撮影できるので、そうした場所を探してみるのもいいでしょう」
たとえば、河川敷のグラウンドの場合、ベンチ側から引きで撮ると、遠くに低い草木と川の流れが見えるフィールドの雰囲気がよく出て、意外とよい写真になる。「後で見返したらバックが台なし」ということがないよう、試合で初めて訪れる球場なら、少し早めに着いてあちこちでカメラを構え、どのようにグラウンドが見えるかを確認するとよさそうだ。
そして、慣れていない人がスポーツ撮影でやりがちなのが、「カメラで選手を追いかけてしまうこと」だという。追いかけながらシャッターを押すと、タイミングが合わない、手ブレをする、ピンボケになるなどの悪影響が出る可能性が高い。だから、場所を決めたら「そこで粘ってわが子の動きを待つ」くらいの心構えがいいのである。
さまざまなシーンを撮影し、物語をつくってみよう
「バッターボックスに子どもが入る辺りでカメラを構える人が多いのですが、その前こそシャッターチャンスです。ネクストで『次は自分の打席だ』と気合が入っている表情を撮影してみてください。あるいはネクストで一生懸命に素振りしているとき、そういう時の子どもはとても無心で、とても良い表情をしています」
「バッターボックスに入った時も、バットにボールが当たる瞬間を撮影しようと思ったら難しい。でもバットを振り切ったところなんかも、なかなかいいショットになりますよ」
バットを振り切った後の場面を「振り切り」と呼ぶのだと教えてくれた。実際にプロ野球でも「振り切り」の写真はよく使われる。
そもそもバットになかなかボールが当たらないし、当たってヒットになったらついうれしくて飛び上がったり片手を突き上げたりして、ブレまくりの写真にガッカリする母親の「あるある」には、どう対処したらいいのか。
カメラマンは笑いながら「でも、そういう写真は写真でいいと思います。ネクストにいる時の気合の入った表情、振り切った瞬間、『あ、ヒットになった!』で、親が飛び上がってブレまくっている写真が続く……いいじゃないですか。そうした写真を連続して並べて眺めてみたら、逆に臨場感があるでしょう」と言う。
「あと、守備で構えた瞬間、グッと力が入るんですね。その瞬間を切り取れたら、とても良い写真になりますよ。たまたま打球が飛んでいくこともあるでしょうから、粘って待って連写していれば渾身の一枚が撮れるかもしれません」
一連の流れを考えて撮影するのもいいと話す。例えば最初のウオームアップから、ノックの場面、ベンチで監督が話している時の子どもたちの後ろ姿、イニングの表裏が終わるごとのスコアボード、並んだヘルメット……まとめてみると素敵なフォトムービーにもなるだろう。これは撮影係として記録を残すためにもよい。
撮影係になって1年後にスライドショーを作成する、なんていう場合にも、同じような写真ばかりにならないよう、球場全体の様子や選手たちの使う道具類、応援する保護者なども撮影しておくと、バリエーションもつく。
写真を見て物語が浮かぶようなイメージを持つといい。ベンチで顔をタオルで拭う姿とか、ボールを集めてカゴに入れて持ち運ぶところとか、選手同士が話をしているところとか、細かい場面をひとつずつ拾い上げていく。なにげないグラウンドでの姿も、あまねく撮影してみよう。
気楽に楽しみながら撮影を…たまには“生”で目に焼き付けよう
結局、技術を別にすれば、どれだけ子どもの表情やアクションを捉えられるかがポイントになる。かなり後ろから引いて撮影したり、撮れるなら近づいて選手の目の高さに合わせて流れる汗にフォーカスしたり、「正面から、あるいは選手を真ん中に置いたアングルと決めつけずに」いろいろな角度から、ひたすら粘って、ひたすら撮影に徹してみよう。
「今は加工も簡単にできますから、あまり考えすぎず、それより選手たちが一生懸命にプレーする姿を楽しく撮影してください」
良い写真を撮影したい気持ちはとてもよくわかるとカメラマンは語りながら、「たまにはカメラを置いて、お子さんの実際のプレーを目で見て、脳裏に焼き付けてください」と、最後にメッセージを寄せてくれた。さぁ、少年野球シーズンも始まる。カメラ片手に応援に行こう!
(大橋礼 / Rei Ohashi)
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