学童野球に“新リーグ”始動 勝利至上主義を撤廃…「子どもを邪魔しない」独自ルール
全国拡大の“新リーグ”「INFINITY BASEBALL LEAGUE U-12」が3月始動
子どもたちを“ど真ん中”に考え、その無限の力を導く学童野球のリーグがある。これまで東京、神奈川、埼玉を中心に展開されてきた「プレイヤーズ・センタード・ゲームズ」(PCG)の運営を引き継ぎ、2025年3月から始動する「INFINITY BASEBALL LEAGUE U-12(インフィニティ・ベースボール・リーグU-12)」(以下、IBL)。練馬アークス・ジュニア・ベースボールの中桐悟氏、ポジティブベースボールクラブの齊藤宗章氏、さいたまインディペンデンツの島本隆史氏が中心となって動き出した新リーグが目指すものとは何か。
独自のルールを設けた小学生向けのリーグ戦組織が立ち上がったのは2020年のことである。その取り組みを「全国に広げていきたい」と語る中桐氏が言葉をつなぐ。
「PCGの取り組みを土台にしたIBLは、2025年3月からスタートします。全国のチームとの繋がりをより広げていきたい」
子どもたちの地力が自然と伸びる環境づくりは、PCG時代と変わらないテーマだ。運営理念には「無限」「挑戦」「友」。また、子どもたちが夢を語れることを当たり前にするために「夢」、そして、子どもたちの挑戦を大人が応援できる空気を作るために「応援」という言葉を掲げている。いわゆる「勝利至上主義ではない」リーグ戦を通して、子どもたちの成長や野球への思いを育んでいく環境がある。中桐氏は言う。
「基本的には全員が試合に出場する。あるいは、選手をたくさん起用するとチームにポイントが寄与されるような仕組みになっています。勝つことだけではなく、チームに所属しているメンバー全員が成長できるような環境を提供することがコンセプトの1つです」
子どもたちの「成長」で言えば、野球の技術向上もその要素の1つだろうが、心の豊かさや野球への思いが育まれていくことも「成長」と言えるのではないか。大切なのは「野球を楽しむ」ことだ。中桐氏が続ける。
「一言で『楽しむ』と言っても、いろんな捉え方があるものです。野球を始めたばかりの子どもの『楽しい』と、小学6年生のそれは違うもの。各成長過程に応じた、子どもたちが『楽しい』と感じるコンテンツを提供していって、それぞれの成長につながっていくことが大事だと思っています」
小学生から中学生に向かう年齢になれば、野球の技術が向上して、知識も増える。試合で活躍すれば、自身の成長を実感できて「楽しい」となり、次のステージでの野球につながる。それぞれの年齢に合った「楽しい」も求めながら、リーグ戦は進んでいく。
自由度の高いルール設定で野球人口増加にも期待
IBLのルール設定も各年代に沿ったものだ。小学1〜2年生はTボールのような形式、あるいは下投げでピッチャーをやってもいい。バットを振ってボールが当たれば、嬉しそうに自然と野球に親しむことができる。3〜4年生であれば、一般的な野球のルールに近い形式で試合を行う。盗塁数を制限、あるいは捕逸による進塁を禁止するなど、柔軟に対応できるルール設定になっている。
また、4つに分けたクラスでは、グラウンドサイズやイニング数、さらに球数制限などがそれぞれ異なる。攻撃において少なくとも1打席は立って試合に参加するなど、全員出場が基本。1試合で投手と捕手の交代を禁止したり、1試合あたりで最大14人まで打順の記載を可能にするなど、独自ルールは豊富だ。
昨年12月末時点で21チームがエントリー。群馬、栃木、静岡、愛知、兵庫など、参加地域は広がりを見せている。中桐氏は言う。
「スタートまでには倍ぐらいのチーム数にしたいですね。3〜11月で地域に分けて行われるリーグ戦では、試合数に縛りはありません。たとえば積極的にやるチームは20試合できるでしょうし、逆に3試合になるところもあるでしょう。自由度を高めながら、子どもたちの環境を邪魔しない活動にしていきたいと思っています」
PCG時代から参加している齊藤氏は「自由に対戦できて、縛られない試合の組み方やルールで対戦できるので、チームとしても楽しくやらせてもらっています」と言う。そして、島本氏はこう語る。
「我々のチームは立ち上げ当初の3年前は、幼児や小学校低学年の層を中心に活動していました。PCG時代から、このリーグの受け皿の広さ、ルールの自由さ、低学年の実戦機会の多さを実感してきました。『ルールを変えれば試合もできるよね』というところで、保護者の方も喜んでくれています。試合でしか見られない子どもたちの表情もありますし、そこがこのリーグの良さだと思います」
子どもたちの無限の力を引き出す新リーグが、学童野球に新たな風を吹き込んでいる。
(佐々木亨 / Toru Sasaki)
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