全国舞台は「振れずに終わる選手も」 130回無失点…私学剛腕から奪った“自信の1”

飯塚理監督(左)と上一色中ナイン【写真:橋本健吾】
飯塚理監督(左)と上一色中ナイン【写真:橋本健吾】

中学軟式野球の公立・上一色中は星稜中に敗退も…「バットの面を長く作る」打撃で奮闘

 チームの代名詞でもある“強打打線”で、難攻不落のエースから価値ある得点を奪った。3月下旬に行われた中学軟式野球の全国大会「文部科学大臣杯 第16回全日本少年春季軟式野球大会ENEOSトーナメント」で、ベスト4に入った東京都の公立・上一色中学校。飯塚理監督は「大会を通じて素晴らしい経験ができた」と手応えを口にしていた。

 準決勝では連覇を果たした星稜中に1-4で敗れたが、相手エース・服部成投手(3年)から1点をもぎ取った。スコアをだけを見れば「わずか1点」と思うかもしれないが、ベンチでは選手たちがガッツポーズを連発し、飯塚監督も「自信になる1点だった」と興奮気味に振り返っていた。

 その理由は相手エース・服部にあった。球速140キロ台の直球とキレのあるスライダーを武器とする中学No.1投手は、新チームになった昨秋から練習試合を含め、この試合まで130イニング連続無失点中だった。そんななか、上一色打線は3点を追う6回2死二塁から糸川魁音外野手(3年)が右前適時打を放ち、“ゼロ行進”に終止符を打った。

 翌日の決勝で優勝投手になった服部も、上一色打線にはかなりの神経を使ったようだ。「甘い球は逃してくれない。打席のなかでどんどんスイングを仕掛けてくるので気が抜けなかった。自分を成長させてくれる相手でした」。アドレナリン全開の右腕はこの日、自己最速となる147キロをマークしていた。

表彰を受ける上一色中ナイン【写真:橋本健吾】
表彰を受ける上一色中ナイン【写真:橋本健吾】

「振れないで終わる選手も多いなかで、全国の舞台で力を発揮できたことは自信」

 強打を生み出すのはブレない指導方針の賜物だ。上一色中は都内の公立中学校でグラウンドが狭いため、外野手をつけたシートノックをするのは困難。限られたスペースでも試合を意識した練習を心掛けている。打撃では伝統として受け継がれる「初球からのフルスイング」を体現し、今大会でも1番から9番まで積極性ある姿が印象的だった。

 技術的な部分では、相手捕手のミット付近から「バットの“面”を長く作る」ことを意識させ、速球にも負けないスイングを作り上げた。レベルスイングのなかでもバットを縦に入れる意識で、インパクトは点ではなく線で捉える。好投手の攻略には必要不可欠の要素だという。

 日本一には届かなかったが、飯塚監督は「練習試合では手も足もでなかった相手。敗れはしましたが、選手たちは楽しかったと思いますよ。振れないで終わる選手も多いなかで、全国の舞台で力を発揮できたことは自信になったでしょう」と、臆することなく向かっていった選手たちを称えた。

 成長著しいナインは、更なるレベルアップを誓い練習をスタートしている。「好投手から1点を取ったことで、子どもたちはどう変わっていくか」と指揮官。次なる目標は8月に行われる「全日本少年軟式野球大会」。伝統の強打を武器に3年振りの日本一を狙う。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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