大会前に「汗だくの練習は違う」 少年野球の“最強チーム”が掲げる型破りな方針
多賀少年野球クラブは2018、19年に日本一、今夏も全国大会出場へ
今、少年野球界で最も有名な指導者といっても異論はないだろう。楽天・則本昂大投手も育てた辻正人監督は、滋賀・多賀町で活動する「多賀少年野球クラブ」を率いて今年で34年目を迎えた。長年に渡って強いチームを作り続ける辻監督の頭や心の中には、どんな思考や思いが刻まれているのか。その秘密を連載で解き明かす。第1回は「全国大会を逆算した年間計画」。ファウルボールを追わせない、出場する大会を絞るなど、少年野球の常識に捉われない考え方には確かな根拠があった。
多賀少年野球クラブは、今年も全国大会出場を決めた。2018、2019年には2年連続日本一に輝いている。選手が毎年入れ替わる中で安定して全国トップレベルを維持するために、辻監督は年間計画を立てている。
「私が何よりも優先するのは野球を楽しむことですが、子どもたちの目標には全国大会があります。そこまでを逆算して1年のスケジュールを立てます。6年生を中心にしたチームが夏に開催される全国大会を終えると、4、5年生は来年の夏に向けてスタートを切ります。ポイント、ポイントでチームの仕上がりをチェックしています」
辻監督は時期によって選手やチームの到達目標を定めている。日々の練習や定期的な遠征で仕上がりを確認し、微調整しているという。
「今はプレーの精度を高める時期、今は自分の限界を試す時期など、必要な技術を身に付けられるように子どもたちを導いています。例えば外野手であれば、打球を後ろに逸らしてもいいのでダイビングキャッチをして、どれくらい足りないのかをやり続ける時期が必要です。これを全国大会の予選が始まる前にやるのは間違っています。自分の能力を伸ばす時期、能力を把握した上でプレーする時期、相手の能力まで理解して戦う時期などを考えながら練習しています」