女子野球は“違うスポーツ”と捉えよ… 元プロの強豪チーム監督が唱える斬新な改革案
女子野球界で16年、尚美学園大・埼玉西武ライオンズ・レディース監督の新谷博氏
日本女子野球界には“二刀流”の指導者がいる。平日は尚美学園大学女子硬式野球部で指揮を執り、週末になると埼玉西武ライオンズ・レディースの監督に早変わり。その人こそ、元西武、日本ハムで活躍した右腕、新谷博氏だ。「大変なのは、全国大会やヴィーナスリーグで両チームが対戦する時。選手から『監督どっちのベンチに入るんですか?』なんて言われちゃって」とバツが悪そうに笑う。
尚美学園大では女子硬式野球部が誕生した2006年から監督を務めるが、ライオンズ・レディースは2020年に発足。“先輩”に敬意を表し、昨年まで直接対決では大学ベンチに入ったが、今年は埼玉西武のユニホームを着る。4月23日に行われたヴィーナスリーグでの対戦は6-3でライオンズ・レディースが勝利。「ちょっと学生からの視線が痛かったな(笑)」と振り返る。
女子野球に携わって16年。チーム数に加えて、野球のレベルも「10倍以上になっているんじゃないかな」と、その発展に目を細める一方、「まだマイナースポーツですよ、女子野球は。このままだったらメジャーにはならないでしょう」と厳しい言葉も口をつく。その心は……。
「選手や周りで支えている人たちも、男子の野球に憧れて『ああなったらいいよね』と思いながら野球をしている。でも、どんないいものを作っても、NPB(日本プロ野球)の面白さには敵いませんよ。今のままだったらね」
確かにプロ野球の歴史は長く、時を経ながら確立されたフォーマットやファンベースがある。女子野球が同じ形での成長を目指すなら、同等あるいはそれ以上の時間は必要になり、長らくマイナーの道は抜け出せないだろう。女子野球がメジャーなスポーツとなるために、新谷氏は斬新なアイデアを温めている。
「僕は野球ではなく、女子野球をやらないといけないと思っている。男子の野球とは全然違うスポーツだと考えないと、女子野球はこれ以上発展しないと思っています。例えば、女子に合わせたルールを作るとか、ユニホームも独自のスタイルを考えるとかしていかないと、ここが限界。この先の発展を考えたら、今まで持っていた“野球”という概念から離れて、発想の転換をしないといけないと思っています」