徹底した「見逃し練習」で全国V 東京・上一色中が“143キロ右腕”苦にしなかったワケ
全日本軟式野球大会初Vの東京・上一色中は初戦で大会No.1投手から4得点
「中学生の甲子園」で頂点に立った裏には、2週間かけた最速143キロ右腕の対策と控え選手のレベルアップがあった。東京・江戸川区の上一色中は今夏、全日本少年軟式野球大会で初優勝を果たした。初戦では大会ナンバーワン投手と呼ばれた聖心ウルスラ学園聡明中(九州代表・宮崎)の森陽樹投手(3年)から、4番の福原勘太外野手(3年)が本塁打を放つなど4得点。攻略法は徹底した“見逃しの練習”だった。
初戦の対戦相手が決まると、上一色中の西尾弘幸監督は大会ナンバーワン投手の攻略法をイメージした。聖心ウルスラ学園聡明中のエース・森の最速は143キロ。140キロを超えるスピードは、どの選手も経験したことがない。対戦まで約1か月。西尾監督は逆算して練習メニューを考えた。
上一色中では普段、山なりの緩い球を打つ練習に重点を置いている。しっかりと軸足に体重を乗せ、ためをつくったスイングを身に付ける目的がある。西尾監督は「遅い球を強く打てる動作が身に付けば、速球にも対応できる」と考えている。ただ、中学の軟式で140キロを超える球速はレベルが違う。
「目と体を慣れさせるのが最も効果があると考えました」
西尾監督は初戦の2週間前から、2台の打撃マシンをどちらも最も球速が出るように設定した。さらに、打者の体感速度が140キロくらいになるよう、実際のマウンドよりもホームベース寄りにマシンを置いた。最初の1週間、選手には一切バットを振らせず、タイミングを取って見逃すように指示を出した。