元プロも出場、阪神園芸から土の贈呈…全国に根付きつつあるマスターズ甲子園

「競技としての野球」から「生涯野球」へ

 駒田氏も含め、59人の元プロ選手が予選に参加し、19人がマスターズ甲子園に出場を果たしている。試合が終わると、阪神園芸から甲子園の土がプレゼントされる。また通路では、女子高生が選手全員にインタビューする。あの甲子園の“特別感”を演出しているのだ。まさに至れり尽くせり。スタンドにも母校のOBが集まって校歌を歌う。吹奏楽のOBも駆けつける。

 さらに審判もOB、中には甲子園に出場できなかった審判もいる。彼らも晴れの舞台で声を張り上げる。マスターズ甲子園に参加するために、年休を取って参加するメンバーや海外から駆け付けるメンバーもいる。

 大会では「甲子園キャッチボール」も開催される。元球児とその子供のキャッチボール。最年少は0歳11か月だという、中には、元球児がお父さんお母さんを連れてきて、一緒にキャッチボールをすることもあるという。

 1年目の予選は4県82校だったが、2017年は40都道府県619校にまで広がった。全国高校野球OBクラブ連合という組織もうまれ、「夢・継投」を目指すマスターズは全国に根を下ろしつつある、

 マスターズ競技は、野球だけではなく、陸上やラグビー、柔道、駅伝などにも広がろうとしている。ユニバーサルデザインでルールを見直しつつ年齢に関係なく楽しむことができる競技を目指す。そしてその先には、「ワールドマスターズゲームズ2021関西」が控えている。これは4年ごとに開催される中高年齢者のための世界規模の国際総合競技大会。参加資格は30歳以上となっている。

 2020年の東京五輪から、ワールドマスターズゲームはオリンピック、パラリンピックとセットになって開催されることが決まった。その最初の大会が、2021年の関西だ。2020年東京五輪、2021年3月WBC、5月ワールドマスターズゲームズ、それぞれの世代の野球日本代表が活躍する

 長ヶ原氏は、世代を超えて共有される「野球文化の楽しさ」について、わくわくするような口調で語った。会場には、プロやアマの一流の競技者、指導者、研究者が詰めかけていたが「競技としての野球」を離れた「生涯野球」は、新鮮に受け止められたのではないだろうか。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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