手術10度、縫い目191針…「怪我で諦めないで」 元最多勝右腕が説く“準備の大切さ”

野球教室で指導を行う館山昌平さん【写真:荒川祐史】
野球教室で指導を行う館山昌平さん【写真:荒川祐史】

2009年最多勝…プロ通算85勝の館山昌平さんが野球教室で熱血指導

 プロで酸いも甘いも経験した選手の指導は、小学生の心に深く刻み込まれたに違いない。3日、東京・西東京市の早大・安部球場で、西東京市、小平市、東久留米市の少年野球チームを対象とした「GRAFARE(グラファーレ)ジュニア野球教室」(タクトホーム株式会社主催)が行われた。

 楽天の今江敏晃新監督や、今季26本塁打で3年ぶりの本塁打王に輝いた浅村栄斗内野手、プロ20年間でゴールデン・グラブ賞を4度受賞した坂口智隆さん(元オリックスほか)ら、そうそうたるメンバーが参加する中、子どもたちの心を鷲づかみにしたのは、メイン講師を務めた元ヤクルト投手の館山昌平さんだ。

 ウォーミングアップでは、ストレッチの重要性を強調。自ら開脚を実演してみせ「足が90度以上開かない選手はプロ野球選手になれません。浅村選手だって1日に2時間やります。だからヒットを打てます。これは1人でもできる練習なので、しっかりやってください」と呼びかけると、一生懸命に体を折り曲げる選手たちの姿が見てとれた。

 キャッチボールではまず、ボールの握りから説明。「人差し指、中指、そして親指の三角形を意識して、きれいな形でしっかり握ることができていれば、いいボールを投げることができます」。人差し指と中指の間の幅については、「軽くパーをした時の指の幅が自然です。ボールを見ないでも、その幅で投げられるようにしてください」。

 投手を集めた指導では、リリースポイントの位置について「ガッツポーズは自然に出るものだから、その位置が一番、感覚があってスピードも出せます。わからなくなったら、そこで投げられているかを、監督やコーチに見てもらうといいです」。珠玉のアドバイスが次々と飛び出し、熱心にメモをとる指導者もいた。

選手1人1人にアドバイスをする館山さん【写真:荒川祐史】
選手1人1人にアドバイスをする館山さん【写真:荒川祐史】

「どうすれば怪我をしないか、今のうちに伝えておくことが大事」

 しっかりと準備を行うことが、怪我の予防にもつながる。そこには館山さん自身の苦しい経験がある。現役時代には3度の右肘じん帯再建手術(トミー・ジョン手術)を行うなど、計10度の手術で縫い目は191針に達する。2009年に16勝を挙げ最多勝に輝くなど、プロ通算85勝を挙げた代償として、傷だらけになりながらも右腕を振り続けた。

「(自分は)怪我をした経験がすごくあるので、どうすれば怪我をしないか、今のうちに伝えておくことが大事。それが子どもたちの幸せな未来につながる。自分の周りには、怪我で諦めてしまった人が多かったということもある。これからの子どもたちには、そのようなことがないようにという思いで話をしました」

 2015年にはカムバック賞を受賞。幾度の手術を経験し、復活した右腕からこそ、伝えられることがある。一人でも多くの野球少年、少女が怪我や痛みを抱えることなくプレーできることが、館山さんの願いだ。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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